私のところに「家賃保証をしますよ」とか「30年一括借り上げ」と賃貸住宅を建てませんかとくる営業マンはいませんので体験談ではありませんが、いったいどういうふうにクロージングをしているのか興味深いところです。
地主さんは80歳、このまま死んだら息子のところにすごい相続税がくるといつも頭の片隅にはあるでしょう。
そこに「お父さんっ(私、お客様にお父さんとかお母さんって言うの個人的に嫌いです)ここに建物を建てませんか、1億円の借金は必要ですが、どこどこの田んぼの資産価値がこのハイツを建てたら格段に下がります。そしてとにかく相続税がほとんどなくなりますし、さらに毎月40万円のローンはありますが、毎月70万円の収入が入ります。おまけに当社では家賃保証のシステムをとっていますからリスクは限りなく低いです!いかがでしょうか」ときたら良い話に聞こえます。書いている私も良い話に感じますから。
しかし、この世の中に良い話はありませんし、それを持ってくる人はその人にもメリットがあるから持ってくるというのが普通の話です。
なぜ、私が今から賃貸住宅を新たに建てるのは素人の方はやめたほうが良いと考えるようになったかというと辺り一面がハイツやアパートだらけだからです。
そして、人口がこれからぐんぐん減っていくからです。
絶対に満室になんかなりません。新築の5年くらいの間だけです。
借りる方はいいです。新しいところが建ったらそこに引っ越し、古くなったらまた新しいところに引っ越せばいいのですから。
しかし、オーナーはそんなわけにはいきません。
8戸あって毎月70万円が30年間絶対にもらえるはずがないでしょう。家賃保証を絶対だと思っている私のお客様がたくさんいるから余計に悲しくなるのです。
毎月70万を1年間もらったら840万ですよね。
840万円の年収が30年間続いたら2億5000万円です。
では、極端な話かもわかりませんが、全室空室が25年間続いたらどうなりますか、その時家賃保証はどうなるのか。そんな物件に家賃保証を100%していたら施工会社は大赤字です。
家賃保証は必ず100%もらえるのではなく、空室率によってどんどん下がるのです。
8戸あって、そのうち3戸しか住人がいない。これからはそんなのが普通の時代です。
その時、地主さんは銀行に毎月40万円のローンを払い続けますが、家賃保証の最低保証額が20万円だったらどうしますか。
80歳にのおじいさんが今から毎月家計が火の車になる。年金があると言ってもおじいさん、おばあさんになってお金の心配をするというのはこの上なく不幸なことです。
この時に建てた会社が苦しんでいる地主さんを見て「3000万円で買いましょうか」ときます。
だいたい賃貸住宅アパートは1億で建てたら粗利が40%前後です4000万。4000万儲かった上にそれを3000万円で買いましょうかと現れ、困窮している地主さんは他の資産をも売り、その物件の抵当権を解除してから3000万円で売り、身も心も疲れ果て、まだ本人の代ならば息子や家族に叱られ、息子の代に変わっているのなら結局相続税を収めたほうがよかった、となるのです。
今から新たに賃貸住宅を建てるのであれば、それなりの覚悟と勉強をしてからではないと危険です。
大手の会社はプロ、地主さんは名目的には個人事業主という形式になりますが普通のおじいさんです。
商売は人の人生を良くしないといけない。人の人生をおかしくさせるようなものは商売として間違っています。
全部が全部ではなく、賃貸住宅アパートでも素晴らしいところもあると思いますし、建ててよかったと言われている方も多くおられます。でも、今からの時代を私はこんなふうに思っていますし、考えています。
リスクなく儲かるものなどこの世にはないでしょうし、戦後一所懸命に働いて、この日本を創ってきてくれたおじいさん世代が不幸になるようなことがあってはいけません。
最後に、物件をお持ちならリフォームしてください。お前のところがやっているからだろうと思われるかもわかりませんが私の親にならそう言います。
それか、店舗や自由度の高い駐車場くらいがいいと思いますよ。
2016年10月10日
賃貸住宅新築をすすめるのは正義か 続編
posted by orangeknight at 11:18
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