西脇市のお客様の話です。今日も工事をご依頼頂き伺っていたんですが、私はこのお客様のことをとても大切に想っています。
一番最初の出会いは私の飛び込み営業です。こちらの川が氾濫した時一人で営業活動に行きました。
辺りのおうちは床下や床上浸水だらけ。
前の日にニュースでそれを知り、以前に勤めていた会社で「僕行ってきますんで!」と自由に動ける休みの日にまわったんです。
行くと既に業者も多いし、ガレキやゴミの山だらけ、道路は泥まみれでなかなかの状態でした。
人の不幸の時に飛び込み営業は少し心苦しいですが、悪いことをするんではないので「いざっ」と気合いを入れてまわったんです。
しかし、なかなか話にならず、浸水していないエリアまできた所にあったおうちが今回のお客様のおうちでした。
純和風のすごい大きな屋敷、門があり、入りづらい雰囲気満載でしたね。
門にあるインターホンを押すとお手伝いさんがおられたんです。そして門前払いを受けました。
「いやいや、ちょっと」と踏ん張っているところに出てこられたのがこちらの奥様でした。
今から16年前、私24歳、お客様79歳でした。
品のある奥様で「これこれ〇〇さん(お手伝いさんの名前)、どうしたんですか」
「奥様、おうちのことでまわってらっしゃる方なのですが」とまるでドラマのように奥様とお手伝いさん(こちらも70歳代)の会話がありました。
そして、最初の工事をいただけました。
「あなた、わざわざ姫路から来たんでしたら、裏の塀が少し色あせしてきたから塗ってくださる」と。
板の塀を塗装させていただくことになりました。嬉しかった。来た甲斐があったなぁと感じた。
お手伝いさんも良い方で「奥様がそう仰るならこちらです」と案内してくれました。
それから数年してからひょんな時に「なぜあのとき僕に仕事をくださったんですか」とお聞きすると「あなたの目が一所懸命だったからですよオホホホホ」と言ってくれたのがまた嬉しかったです。
今日も年齢の話になりましたが、私40歳、お客様は95歳です。
いろんなことがありました。
おうちは築80年とエレベーター付きの別館が築30年、合わせて300坪で、隣には借家と大きな蔵があり、二軒となりにはこちらも立派な築120年くらいの大きな建屋とその横にまた借家があり、敷地はもうすごい広いんです。
私はあれから16年、この借家も含めた全部の建物を工事させていただいています。金額にしても普通の家が何軒か建つくらい。
お手伝いさんにもあれからよくしていただきましたが数年前に亡くなられました。
住み込みで40年働かられたらしく、奥様にとってはなくてはならない存在だったと何度もお聞きしました。
お手伝いさんもいつも「奥様には本当によくしていただいているんですよ」と言われていました。
今は奥様お一人でお住まいですが、こちらは元々開業医で、奥様のご実家も医者、亡きご主人様は元陸軍士官で戦後に医者になられたらしく、奥様の息子様も医者、娘様も開業医と結婚し、その子供様も医者。
華麗なる一族で、奥様にそんなお話を聞きますが、お嬢様育ちでセレブな話が普通だと思われているので嫌味が全然なく聞いていてワクワクして楽しいです。
「女学校に行ってましてね、そこで〜」とか「切手ブームがありまして、もう一億円分くらい買って〜」のようなお話。お客様のお人柄なんでしょうね。
伺う時には「来られる時にアイスのシュークリームを買ってきてくださる」とか、先月なら「期日前投票に車で乗せて行ってくださいな」と普通に言ってくださるところが嬉しいと感じることができる奥様です。
私が会社を始める時も手紙をくれました。「商売は営業マンとはまた違う、心してかかるよう〜」という内容だったと覚えていますし今も持っています。
なかなか他人にそこまで言ってくれる人はいません。
こんな大きなおうちにお一人で、気づいた時にはお亡くなりになっているのでは、大丈夫ですかと失礼ながらも心配すると「人間は一人で生活出来るうちが花です。コロッといけたらいいですね」と今の生活に満足されています。
「だから私はこの歳ですが家のもりもするんですよ」と。「主人と過ごした家ですしね」という一言が、昔の日本の女の人の言葉であり、美しいなと感じたこともあります。
いつも私の体や、資金繰りの心配までしてくださる95歳の奥様。
今でも「何か世の中の役に立ちたいわね」といつも仰います。
さすがに以前と違い、テキパキと歩き回ることなどができにくくなられていますが、どこも悪くならずに人生を全うされればいいなと、いつも工事が終わった時に思います。
最初にお会いしたときから16年、本当にお世話になっていますし感謝しています。
とても大切に想う西脇のお客様の話でした。
2017年11月07日
とても大切に想う西脇市のお客様の話
posted by orangeknight at 23:21
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