シロアリの駆除、予防工事は専門的に防蟻処理と言います。床下に潜って施工するので結構大変な作業です。
床下について少し。
あっ床下、これは「ゆかした」と読みます。弊社の坂野が「とこした」と読んでいましたので一応注意書きです。
では。
床下というものは迷路のようになっています。おうちの間取りに合わせて基礎が立ち上がっているからです。
分かりやすく言いますと、6畳の部屋と8畳の部屋の境目は、床下では壁になっているとお考えください。そこに人一人が頭から体を通し抜けられるくらいの穴が空いていて、床下ではそこを通過し隣の部屋にいきます。
こちらは床を解体した状態の写真です。分かりやすいでしょう。
また、廊下などは床下も廊下の幅になっています。そこを這って進み、各お部屋に入っていくと想像してください。
床下に入ったことのある人だけわかるあるあるですが、階段の下は床下が高くなっていて座れるんです。ずっと這い回っていると疲れるので、階段下で少しの間でも座れるとすごいホッとします。方向転換もできますしね。
解体した状態とは違い、実際は床があるので高さが無く、狭いですし、真っ暗、砂ほこりも舞っているなかなか厳しい空間です。
前回も書きましたが、私も20代の頃は本当によく潜っていました。
マイつなぎの服も持っていましたし、床下用の靴も車に積んでいました。お客様に訴える用のデジカメも床下用で用意していました。キャノンのイクシー。何個買ったか。
なぜ床下用カメラかと言いますと、まずコンパクトさが求められます。片手に持ってほふく前進しないといけません。まだスマホはありませし。片手に持ち、前に寝そべって進むのはかなりパワーがいるのです。
また、毎回砂ほこりで床下から上に出てカメラをみるとドロドロになっているんです。必ず壊れますので、それ用にし、毎回お客様に床下の様子をおうちのテレビにカメラを繋ぎ見てもらっていました。
普段見ていない景色なので、お客様への訴求力はやはり凄かったと覚えていますし、効果的だと感じました。
ところが、自分の目で確認し、お客様に床下の状態を自分がカメラで撮り、見せてあげることが自分で潜る値打ちだと思いやっていたのですが、ある日から突然入れなくなりました。
忘れもしません。
姫路市勝原区宮田のF様というお客様のおうちで床下に潜っていた時です。急に心臓がドキドキとなり、今地震が起きて家が崩れてきたらどうしよう、そしてこの照明が切れたら完全に真っ暗で、もう地上に出れないと考え出し、いきなり閉所恐怖症みたいな状態になったのです。
思い出すだけでも今も怖いです。
平静を装い、床下収納から上がり、いつも通りテレビで見せようとしたら、お客様が「そんなの見ないでもあなたが悪いっていうなら(シロアリ予防)するわよ」と仰ってくださり、いつも出してくれる手作りケーキと紅茶をいただき、防蟻処理を受注もしたのですが、帰りの車でも鼓動と冷や汗がなかなか収まらず、以後15年オーバーでしょうか、あれ以来一度も入れなくなりました。
そんな経験と記憶があるので、私は床下に入ってくれる人に対し、おそらく普通の方々より深く感謝しています。きつく大変ですし、リスクもとっている仕事なんだと本当に思っています。
当時の床下点検では、40年以上前の弁当箱や空き缶も幾度かみつけ、高度経済成長の時代の現場を感じたものです。
また、真新しい蛇の抜け殻をみつけひやっとしたり、お客様の飼い猫が入ってしまい、困ってしまったことなど他にもたくさん思い出があります。
床下に入ったことがない方はたくさんいると思います。健康な体をお持ちでしたらぜひ、経験として一度や二度は入ってみてください。
今いる部屋のすぐ真下に、別世界があることに気付かされると思いますよ。
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