めちゃくちゃ面白かった。

前作の「終わった人」そして「すぐ死ぬんだから」に続く定年後を迎えた人の物語。どちらも共感したので今回も買いました。
主人公の佐川夏江は70歳を迎え、これまでの人生を後悔しないまでも今までの人生を振り返り、あのときこうしていればとあれこれ考える。
今の70歳の女性が20歳代のときに置かれた社会的状況。
会社に就職したなら寿退社や女の子と呼ばれたことなど、今では考えられないが、時代の急激な変遷を描写する。
良い男との結婚が人生を左右するとされた価値観。
その時代にありながら、当時、夏江はお母さんから経済力をつけておきなさいと言われたという。そしてその意味が親の年齢になってわかったとあった。
何が人の幸せかは人それぞれであるが、自由を手に入れるためには自分1人でご飯が食べれるということが必要だったのだ。
妻は専業主婦という価値観こそが、日本の少し前までの社会での男性と女性の関係性を創造したのかと感じた。
昨今も女性蔑視と問題視されるが、それが当時の価値観だったのだと女性である作者が物語る。
178ページに書いてあった。「今度生まれたらと考えることは、今の自分をどうするかと考えることなのだ。」と。
内館さんの描写は本当にタッチが軽快で気持ちがよく、かつ人の気持ちや考えていることを的確にキャッチされている。
歳をとればみんな死を身近なものとして考える。そんなとき、私も人生を振り返ったら思い出というものだけが残る気がする。
共感だ。死を深く考えている人はみんなそこに行き着くのかなとも思う。
多分、私も齢70になればまた見えてくることは変わるでしょう。まだまだ今は浅いと思う。
でも、そのときに大きな後悔をしないよう、今を全力で生きようと、佐川夏江に扮する内館牧子さんに教えていただいた気がします。
とても面白い本でした。