この本読みました。小林よしのり氏の「民主主主義という病」です。
フランスの絶対王政から1789年に勃発したフランス革命周辺を例にとり、民主主義というものがいかに紙一重なものかが描かれていた。
フランスの国歌、あの「ラ・マルセイエーズ」の歌詞にはこんな意味があるらしい。
「進め、祖国の子供らよ。栄光の日が来たのだ。我らをしいたげし暴君の血塗られた軍旗は掲げられた。聞こえるか、戦場の残忍な敵兵の咆哮が?汝らの妻と子の喉元をかっ切るために奴らは我々の元へやってきているのだ。武器をとれ、市民たちよ、自らの軍を組織せよ。いざ行かん、いざ行かん。奴らの汚れた血を、我らの田畑に飲み込ませてやるために」
すごい内容だったんですね。国歌ですよ。君が代がどうこうとか言っているレベルの内容ではない。
フランス革命では市民が国王から主権を奪いました。それに伴い市民側に国を守るという作業が必要となる。主権者となったのですから。
その時に市民側は軍を作りました。それは市民からの募集で、その中でマルセイユからパリに駆けつけた義勇軍が皆で口ずさんでいたのが国歌になったらしいのです。
民主主義というのはそもそも戦争をしないこととは違うのであるということが理解できます。
ちなみに当時のフランスの議会は国民公会と言いましたが、この時に議長席から議員たちが座った席が今の右翼や左翼の語源となっていることは有名ですが、当時の議会では勢力争いが激しく、特に かのジャコバン派のロベスピエールは急進的な左派で、政敵を次々にギロチンにかけたらしい。その数は約4000人にものぼり、この時の恐怖政治を「Terreur」と言ったらしく、それが現在の「テロ」の語源らしいです。
本来、権力が暴力で少数派を圧することがテロだったらしいです。今とは逆のニュアンスですね。
ご存知の方も多いと思いますが、そのロベスピエールも「テルミドールの反動」というクーデターで捕らえられ、ギロチンにかけられました。そこから民衆の支持を得て台頭したのがナポレオンです。
私、フランスのこの時代、高校の時に世界史で習ってから大好きなんです。
また、小林氏は世界での独裁政権が決して「悪」ではないと説いている。
これには私も同感です。独裁だからこそ保たれている秩序はありますし、それは今のイラクやシリア、イスラム国が証明しています。
フセインが治めていたイラクをアメリカンな民主主義が統治できないのはこういうことだと書かれていた。
それは民主主義(正確には共和制)は世界のどこでも実行できるものではないという考え方で、それが機能するのはその前提として安定したネイション(国民集団)やナショナリティ(国民意識)が必要であるとされている。
互いの相違を超えて議論し、必要ならば自らの議論を譲歩してでも一致点を探っていくという民主主義の手続きを踏むには、たとえ利害や信条、政治的立場などが違っても「お互いに日本人だ」といった連帯意識がなければならないと書かれている。
そして、そのためにはナショナルな言語(国語)や文化が非常に重要になる。民主主義の基本は議論であり、それには互いの微妙なニュアンスまで言葉や仕草で理解しあうことが求められ、それがあった日本はそれが根付く土壌があり、そもそも言語も宗教も文化も違う多民族国家では機能するはずがない。だから、独裁制が現在においても多くの中東で機能すると説かれていた。
さらにここで書くと長くなるので割愛しますが、日本の民主主義は戦後に米国によってもたらされたものではないともあり、戦後の教育はそこも少し違うように教えていると私も感じています。
いろんなことが学べ、民主主義ということを掘り下げて考えることができました。民主主義とは何か。また国民主権と言われているがそれは実は違い、国家主権というのが正しい解釈だとあったのが印象的でありました。
ルソーの社会契約論と美濃部達吉の天皇機関説は特に勉強したいと感じました。
小林よしのり氏の本は非常に良い思想を育むと私は思います。
2017年05月14日
「民主主義という病」を読んで
posted by orangeknight at 16:25
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