死をテーマにした話ではありましたが深刻なものではなく、ごく普通の日常はとてもありがたいものである、またその描写から毎日の普通の生活ってかけがいのないものであるし、求めてもすぐには得られるものではないのかなとも感じました。
嫁ぎ先で夫「一樹」が亡くなった後も「ギフ」こと義理の父と暮らす「テツコ」。
私はこの本を読んでいてとても彼女に魅力を感じました。
テツコの空気感が良かった。決して無理することなく、爽やかにギフとの生活を普通におくる毎日。
お母さんに「明日のパンを買いに行って」と頼まれる日常は生きていないと起こらない。
庭の大きな銀杏の木はその家にお母さんが嫁いできたのも、そこに息子が生まれたのも、そしてお母さんが死んだのも全部みていた。
その息子が結婚し、若くして病気で亡くなり、そこに残されたテツコとギフが生活するのもずーっとみている。
独特のゆっくりとながれる時間の描写が、人間の生きていくということをみごとに表現し、普段せかせかしている私はあたたかい、ほのぼのとした気持ちをいただきました。