買いもとめたのは「陽だまりの彼女」越谷オサム氏の作品であり、知らなかったがかなり売れているらしい。
冒頭、広告代理店に勤める奥田浩介とララ・オロールというランジェリーメーカーに勤める渡来真緒は偶然、いえ必然的に10年ぶりに再会する。
仕事の取引先の初顔顔合わせという、ごくありふれた日常的なシーンからこの不思議な話は始まります。
中学生の時からお互いに意識していた2人が恋愛関係に発展するのは時間の問題でした。
むしろ読み進めば理解できることなんですが、時間がありませんでした。
13歳より前の記憶が全くない不思議な女の子真緒、その真緒との結婚を意識するが里子として彼女を大切に育てた彼女の両親は反対する。
彼女には大きな大きな秘密があるんです。
勘の良い方なら途中で分かるこの秘密ですが、僕は最後の最後まで読んで初めて理解できました。
理解したうえで再度簡単に読み直すとそれを意味する伏線が最初っから至る所にちりばめられています。
やがて駆け落ちし、幸せな結婚生活が始まりますがそれもそんなに長くは続かなかった。
そして浩介にとっては突然やってきた彼女との最後の朝、彼女は大好きな曲であるザ・ビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」を久しぶりに気持ちよさそうにハミングしながら朝食を作る。
オムレツ、ベーコン、トースト、サラダ、オレンジジュースにコーヒー、ヨーグルト、テーブルいっぱいの朝ご飯。
楽しそうに朝食をとり、真緒は「じゃあ私、朝刊とってくるね」浩介は「ああ」玄関でサンダルを履きかけた真緒はくるりと振り返り、スリッパを鳴らして戻ってきて「おはようのキス、忘れてた」と言い、軽く二人は口づけをしました。
そして、軽やかな足取りで玄関から出てったきり帰ってきませんでした。
そんなこともあっても良いかもなぁと感じましたし、とても胸を打つ作品だと思います。
ハッピーエンドかどうかの判断は人それぞれだと思いますが、「陽だまりの彼女」というタイトルにも意味があり、「そうだったのか〜」と、僕は何とも言えない温かい感情になり読み終えました。
ぜひ恋愛小説をあまり読まないような方にも読んでみてほしいなとオススメしたい一冊です。