先週のテレビで著者が実家がラブホテルを経営していて…と話をされていた記憶がありますし、かなり話題の本ですからご存知の方、もう読んだよと言われる方も多いと思います。
北海道の湿原を背に建つ、高台にある白壁のラブホテルの話です。それは一つの内容ではなく、いくつかの男と女の話で成り立っていました。
今からラブホテルを作って人生を変えようとしている男の姿。
存続が厳しいお寺の住職の妻が檀家への奉仕でお布施を受ける話。
両親がそれぞれの都合で家でしてしまい、帰るところの無くなった女子高生と妻の浮気に耐える高校教師。
他にもさまざまな人間の、いわゆるきれいな部分ではない人間模様。
普通…と言ったら語弊があるかも知れませんが、普通のホテルでないラブホテル「ホテルローヤル」の周囲でおこるたくさんの人間のいわば裏の顔。
読んでいて、まず一環して人物や風景描写が淡々と、且つ読む声で表現するならば女性の低い声で読んでほしいような本でした。
人生って普通に平凡な人もいれば、いろいろある人もいる。
いや、それはそれぞれの感受性によるところかもわかりませんが、そんなに平凡なものではありませんし、必ず清濁両方が存在するものだとこの年ですが僕は自分の人生を振り返っても感じます。
男と女っていろいろありますね。
でもいろいろあるから、いろいろあったから年をとった時に顔に味わいのあるシワができるんだろうなと日々感じています。
この本はまさにホテルローヤルの部屋の中から建物、そしてその周囲で起こる、起こった出来事が交錯して書かれていました。
そして、何より感じたのはこの本では今はホテルローヤルは廃墟となってしまっていますが、ホテルローヤル自身はいろんな事を見て来たんだなと。
人間の負の部分が現れやすい、また現れるためにあるような場所であるラブホテルであるからこそ、人生の機微があるような気がしました。
最後の章に「ホテルローヤル」がなぜその名前になったか分かる出来事が書かれていました。
このホテルに限らず、全てのものにいろんな想いがある。その上で成り立っている。とても考えさせられた一冊でした。
全ての章で話が途中で終わっているのも気になるところでありますし、しかしそれが何か著者のメッセージのような気がしました。
面白かったです。ありがとうございました。